まもり、ととのえ、たちむかう
わたしたちに必要な たんぱく質
それが
Lacto = 乳の
Ferrin = 鉄+たんぱく質
Lactoferrinのferrinは「鉄の」という意味のferrousと、たんぱく質であることを表すinを付けた造語と考えられます。
Lactoferrin
疾病のリスクを減らすという選択
ラクトフェリン
The choosing to reduce the risk of disease
母乳由来の機能性たんぱく質
私たち哺乳動物の赤ちゃんは、栄養だけでなく、細菌やウイルスから身体を守るための成分を母乳から得て成長します。その代表的な成分がラクトフェリンで、特に初乳に多く含まれています。ラクトフェリンはビフィズス菌を増やし悪玉菌を抑えて、赤ちゃんの未熟な腸内環境を整えます。また、免疫機能の発達にも積極的に寄与していて、赤ちゃんの健全な発育を支える必須成分です。もちろん、大人がラクトフェリンを摂取しても、これらの効果以外に多くのメリットを享受できることが分かっています。
牛乳から分離・精製 希少たんぱく質
ラクトフェリンは多くの機能をもっていますが、ヒトのミルクから得ることは困難です。そのため、その働きと構造がそっくりなウシラクトフェリンを牛乳から分離・精製しています。牛乳に含まれるラクトフェリンは1トンに対してわずか100グラム。この希少で有効なたんぱく質を選択的に摂取できること。これは現代に生きる私たちだからこそ選べる新しい選択肢です。
参考:母乳に含まれるラクトフェリン ( 初乳:5~7mg/ml 常乳:1~3mg/ml)
* 小児保育研究 第48巻, 第3号、1989 より
多くの研究者が注目する多機能たんぱく質
- ラクトフェリンの発見から現代に至るまで -
1939年:
牛乳からラクトフェリンが発見される。
ラクトフェリンは淡赤色をしているため、発見当初はRed Protein(赤色たんぱく質)と呼ばれた。
1967年:
抗菌作用が発見される。
1970年:
この頃からラクトフェリンの機能について報告が増加する。
1980年:
化学構造・立体構造が決定される。
1981年:
工業的ラクトフェリンの分離・精製技術が確立する。
1985年:
ラクトフェリン商業用製造ラインがベルギーで稼働開始する。
ラクトフェリン生産の工業化が実現したことにより、乳児用調製粉乳・サプリメントとして錠剤・粉末製品の製剤が可能となった。
1986年:
ラクトフェリンを含む赤ちゃん用ミルクが発売される。
これをきっかけに機能性表示食品の機能性関与成分としても注目されはじめた。
参考:はぐくみ・E-あかちゃん(森永乳業)
1991年:
ラクトフェリン分解物から抗菌ペプチドが発見される。
1992年:
第1回ラクトフェリン国際シンポジウム開催される。
(2023年11月に第16回国際会議/ローマで開催予定)
1996年:
ヒトラクトフェリンを分泌するトランスジェニックウシの作出が報告される。
2001年:
ラクトフェリンレセプターがクローニングされ、鉄代謝などへの関与とそのメカニズム解明の糸口と期待される。
2004年:
日本ラクトフェリン学会の発足。
(2024年11月に第11回研究集会/鳥取大学で開催予定)
「ラクトフェリン」という多機能性たんぱく質をテーマに、さまざまな分野の研究者が一堂に会する機会として開催されたシンポジウムが、その後はラクトフェリン国際会議として継続的に開催されています。ラクトフェリンと私たちの身体との関係についての新しい情報が、今でも続々と発信されているからです。
確認されている機能
【症状の改善・軽減】
呼吸器系(風邪・インフルエンザ)
消化器系(ロタウイルス)
シェーグレン症候群によるドライアイ
【乳幼児の下痢予防】
【リポ多糖(LPS)不活性化】
【感染防御作用】
【抗菌・抗ウイルス作用】
【免疫機能亢進】
【抗酸化作用】
【抗炎症作用】
【抗腫瘍作用】
【足白癬(水虫)抑制】
【整腸作用】
ビフィズス菌増殖促進
悪玉菌増殖制御
【鉄代謝調整】
貧血予防
【骨代謝改善】
【鎮痛作用・抗ストレス作】
【時差ボケ・睡眠状態の改善】
注目されている機能
【内脂肪低減効果】
【歯周病の予防】
【口内炎の症状改善】
【皮膚ダメージへの効果】
紫外線による損傷軽減
メラニン生成抑制
外用薬・化粧品への応用
【新生児の脳神経系発達への関与】
【放射線障害の軽減】
期待されている機能
【治療薬との併用による相乗効果】
【COVID-19(新型コロナウイルス)関連】
【感染後の症状軽減】
【治療薬の効果増強作用】
【早産予防】
【大腸ポリープの腫瘍化抑制】
【C型肝炎症状の軽減】
出典文献 整理中
まもるラクトフェリン
- 感染から身をまもる ー
ラクトフェリンはミルクだけでなく血液や外分泌液にも含まれ、
免疫グロブリンなどと協同して病原菌やウイルスから身を守ります。
ととのえるラクトフェリン
- 心も体調も穏やかに -
ラクトフェリンの選択的な抗菌作用は、腸内でビフィズス菌を増やし悪玉菌を抑え腸内フローラを整えます。また、鉄の代謝を調節し、貧血予防の効果も期待できます。さらに、時差ボケの解消や睡眠の質改善も観察されています。(眠れる、寝覚めが良いなど)
支えるちから
いのち
たちむかうラクトフェリン
- 疾病リスクに立ち向かう -
私たちの健康の維持・促進のために、体がもともと備えている免疫や代謝のシステムをラクトフェリンは積極的にサポートしています。
経口摂取したラクトフェリンは、消化管内だけでなくほかの組織にも移行して働きます。細菌やウイルスに感染しても、症状を軽減する効果が多く知られています。
ラクトフェリンはこんなところで使われています
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栄養補助食品の機能性関与成分として*
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赤ちゃん用ミルクの成分として
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妊婦の貧血予防サプリメントとして
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口腔ケア製品として
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化粧品の美容成分として
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ペットフード・魚の餌や薬
*免疫調節機能の向上・内脂肪の低下
ラクトフェリンは薬ではありません
ラクトフェリンは様々な疾病に対して効果があると報告されていますが、薬のようにピンポイントで効くのではなく、他の生体成分との共存で協同的に作用する穏やかな効果だと考えられています。本質的には特定の疾病を治療するものではなく、本来その人の持っている体の機能を正常に保つ後押しをするたんぱく質です。
一方で、医薬品としての活用も期待され、新型コロナウィルスの変異株を培養組織に感染させてラクトフェリンが薬剤の効果をより強く促進させる研究*なども、増えてきています。
*)* Wotling, J.W., , (2022) Evaluating the in vitro efficacy of bovine lactoferrin products against SARS-CoV-2 variants of concern(懸念されるSARS-CoV-2変異株に対するウシラクトフェリン製品のin vitro有効性の評価)J. Dairy Sci., 105 (4) 2791-2802. https://doi.org/10.3168/jds.2021-21247
冨田 守
株式会社デイリーテクノ(Dairy Techno INC,)
代表取締役社長 農学博士
1939年 福島県生まれ
1961年 北海道大学農学部畜産学科卒業
1961年 森永乳業株式会社入社
1988年 同社 栄養科学研究所長
1991年 同社 取締役、食品総合研究所
1995年 同社 常務取締役(食品研究所長兼開発部門統括)
2001年 同社 専務取締役(生産、品質管理、開発、物流、調達部門を統括)
2005年 同社 特別顧問
2007年 森永乳業の子会社として、株式会社デイリーテクノを創立
2008年 株式会社デイリーテクノの全株式の譲渡を受ける。
代表者として事業を継承、現在に至る。
褒章・学位
1984年 北海道大学において農学博士号を取得
「牛乳の限外濾過に関する研究」
1993年 科学技術長官より科学技術功労者表彰を受賞
「ラクチュロースの製造法の開発」
【出典文献】
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Sorensen,M. & Sorensen,S.P.L. (1938-1941) The proteins in whey. Comptes Rendus Travaux Laboratoire Carlsberg, Ser. Chimique, 23(7) 55-99.
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Reiter,B. and Oram,J.D. (1967) Bacterial inhibitors in milk and other biological fluids, Nature 216: 328-330.
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織田浩嗣(2013)「ラクトフェリンの生体防御作用に関する研究」ミルクサイエンス、62(3)105-109. 島崎敬一 (2010) 「機能性タンパク質・ペプチドと生体利用」(日本栄養・食糧学会監修(建帛社)第5章「ミルクタンパク質ラクトフェリンの生体調節機能とそのメカニズム」
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Metz-Boutigue,M.H. et al, (1984) Eur. J. Biochem., 145: 659-.(アミノ酸配列決定) Baker,E.N., et al., (1987) Trends Biochem. Sci.,12, 350-353.(立体構造決定)
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Perraudin,J.-P. and De Valck,L. (2020) Lactoferrin production from bovine milk or cheese whey, J. Engin. Appl. Sci. Technol., 2(1) 1-9. 冨田守、「故 Dr.Jean Poul Perraudinへの哀悼の辞」日本ラクトフェリン学会ニュースレター第26号、5-7 (2022年6月発行)。http://www.lactoferrin.jp/newsletter.html
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Tomita, M. et al., (1991)Potent antibacterial peptides generated by pepsin digestion of bovine lactoferrin, J. Dairy Sci., 74: 4137-4142.
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Nuijens,J.H., and Phaming,B.V., (1997) Production of recombinant human lactoferrin in milk of transgenic cows 24. Pediatric Res. 41: 739.
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Suzuki,Y.A. et al., (2001) Molecular Cloning and Functional Expression of a Human Intestinal Lactoferrin Receptor, Biochemistry, 40(51) 15771-15779. 鈴木靖志、Lonnerdal,B. (2006)「小腸ラクトフェリン受容体を介したラクトフェリンの細胞内取り込み」Foods Food Ingradients J. Jpn. 211(5) 406-413.